マーケティングDXを実現するマーケティング部門の設置と組織変革

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わずか数年間で緊急事態宣言などの影響により消費者行動の激変しました。世界中の多くの企業が非対面チャネルの開発を余儀なくされ、マーケティングDXへ取り組み始めた企業も多くあります。

ここではマーケティングDXを実現する上でどのような組織が必要なのかマーケティング組織の設置と組織変革について整理しました。

マーケティングDXとは

企業が持つ様々なデータを収集し、マーケティングで利活用するマーケティングDXでは組織の在り方が非常に重要です。マーケティングDXを、下記のように定義しています。

マーケティングDXとは、データやデジタル技術を活用してマーケティングの業務変革を行い競争優位性の確保をめざすことです。

引用元: マーケティングDXとは?戦略・施策の導き方を事例で解説

マーケティングDXを実行していくうえで、各部門に点在する様々な顧客に関連するデータを活用する必要があります。

マーケティングで利用できる顧客のデータは業種サービスなどによって変わりますが、年齢や性別、お住まい、年収などのデモグラフィック情報の他に、可処分時間や家族構成も活用できる場合があります。

また、POSや会計システムなどで取り扱っている、購入履歴やお取引履歴、購入された商品やタイミングなども重要です。

セールスや販売員、カスタマーセンターやカスタマーサクセスなどでの履歴に残っている顧客のお困りごと等も活用できるでしょう。

B2Bであればその顧客の役割、目標、課題など固有の情報の他に、役職、所属部門、所属企業や業種、事業規模など所属組織の情報が重要になります。また、過去の参加されたセミナーや展示会、開封したメール、閲覧したホームページ等の行動情報、その顧客の同僚との接点の履歴などさまざまな情報が活用できます。

デジタルを活用し上記のようなデータを収集し活用するマーケティングDXを進める上で、マーケティング組織をどのようにアップデートするべきか1つのモデルを解説します。

社内マーケティング組織の役割と目的

マーケティング組織がなく担当者個人でマーケティング機能をおこなう企業はまだまだ少なくありません。社内にマーケティング組織が存在せず、例えば営業やコンサルタントが自分の営業先を自分自身で開拓する状態です。

また、店舗の販促を各店舗の店長が一手に担っている状態も同じことが言えます。

このような場合、前述したデータを個々の担当者が管理していくことはかなり困難であり、できたとしても利用できるデータは個々の権限や能力に依存します。

そのため企業が組織として機能させるためにはマーケティング組織が必要不可欠となります。

マーケティング組織の状況

デジタルトデータを活用したマーケティングDXを実現するには、様々な部門を超えたデータ基盤が必要となり、データ基盤を使いこなすためのマーケティング組織が必要になります。

日本企業のマーケティング部署を設置している企業は11.0%にとどまります。

引用元: 日経BP 「マーケティング部署」設置率は11.7%、人事情報公開中の日本企業5234社の調査で判明

必要なのはデジタルマーケターではない

マーケティングDXというと、ついデジタルとデータを活用するため、デジタルマーケターがかじ取りをするべきだと思われますがこれは大きな間違いです。事業を成長させるために大切な事のひとつとして、具体的に顧客の顔を知っているマーケターとなります。例えば対面での営業経験や接客経験などは非常に活きてきます。対面での営業や接客経験があると、ターゲットのリテラシーやお困りごと悩み様々な要素が具体的に浮かび、その経験が戦略や施策に大きく活かせます。

デジタルもデータも手段であり目的ではありません。間違ってもシステムを導入することを目的化させることなく、顧客と向き合い事業価値を高める手段としてデジタルとデータの利活用を考えることがマーケターが最も大切な視点です。

ただし、一定程度のデジタルやデータに関するリテラシーが必要であることに疑いありません。デジタルマーケターの存在は極めて重要です。注意すべきは、何でもデジタルやデータで解決してしまおうとしてしまうのは極めて危険だということです。

実際の顧客と向き合い商談を重ね、様々なケースのお客様の顔が具体的に浮かぶ経験など無くして、データを活用できません。

事業部内のマーケティング課を設置

一番マーケティング組織を設置・運営しやすいのは、事業部門の中などに設置されたマーケティング課です。事業部内のマーケティング課ミッションは多くの場合営業へリードを渡すことがミッションとなります。

事業部内マーケティング課のメリット

元々、担当者個人でマーケティング機能を担っていた場合と比べ、営業部門のミッションやリードの最適化したマーケティング活動をおこなえるようになるため、以下のようなメリットを期待できます。

  • 担当者毎に管理しているリードを部門で管理
  • ホームページを活用した施策をおこないやすくする
  • 広告予算をつけた施策をやりやすい
  • 個々で管理しているリードの共有

営業がそれぞれ保有している顧客も共有できます。

事業部内マーケティング課の目的

事業部単位でのマーケティング課では、広告運用やLP制作、オンラインセミナー運営など多くの場合、営業のためのリード獲得が目的となりがちです。多くの予算が経費として処理されます。そしてマーケティング予算はプロジェクト単位で事業部内の発注を受けて活動します。

事業部内マーケティング課の課題

事業部単位でのマーケティング課では、他の部門との連携が難しく、いくつか課題が顕在化します。

  • 他部門とのクリエイティブの統一性を損なう。
  • 他部門とリードをバラバラに管理する。
  • 他部門とノウハウやナレッジが共有しにくい。
  • 他部門とデータを扱えない。
  • メルマガ、SNSなど部門別に運用している。
  • 広告予算の非効率化

顕在化する課題の多くは他部門との連携やデータ利活用などに関する課題です。とりわけB2Bにおいては既存取引先企業の新規顧客が重要になります。事業部は異なれど相互にとって有益なリードをそれぞれが保有していることは少なくありません。事業部間のリード情報の共有は極めて重要です。

マーケティング部の設置

事業部別マーケティング課の課題が浮き彫りになり、事業部毎に分散していたマーケティング課の売上貢献度が1~5%を超え始めると、事業部を横断したマーケティング部を設置し自立した組織を運営しやすくなります。この時点では各事業部からの依頼や社内発注をもらってマーケティング支援をおこないます。

マーケティング部設置のメリット

マーケティング部は事業部内のマーケティング課に比べ、事業部を横断したさまざまなマーケティング案件をこなす体制であるため、ナレッジがたまりやすく、分散していたノウハウを横断的に利用できます。

また、全社的に統括してマーケティング戦略立てやすく、さまざまなマーケティング施策やクリエイティブなど、コーポレートブランディングのコントロールなども行いやすい体制となります。

事業部別のマーケティング課に比べ以下のようなメリットが挙げられます。

  • 他部門を横断したクリエイティブの統一性の確保
  • 他部門を横断したリードの管理する
  • 他部門を横断したノウハウやナレッジが共有
  • 全社的なHP、メルマガ、SNSなど運用
  • 広告予算の効率化
  • 部門間でバラバラに使用していたツールの合理化

マーケティング部初期段階の課題

各事業部のマーケティング課を統合しマーケティング部を設置したばかりの時点では、自立したマーケティング組織を設置したものの、主にプロジェクト単位での稼働となりがちです。

まずは、どの部門でどのような施策を実行しているのかを把握する段階からのスタートとなります。そして、ナレッジを吸い上げて統合・効率化をはかります。

したがって、プロジェクトを横断し顧客の行動データをトレースした施策を実施で来ていない状態です。

この形態を発展しテレビCM等をいくつも扱うような予算規模になると、社内のマーケティング部がハウスエージェンシーとして独立することもあります。自社内だけでなくグループ企業や他社のマーケティング案件を取り扱うようになり完全なる独立採算の道へ進みます。日本の大多数を占める中堅広告代理店は、このようなハウスエージェンシーのルーツをたどっています。

しかし、マーケティングDXにおける組織変革を含んだ変革の取り組みは、デジタルとデータを活用する強力なインハウス化された組織へ変革へ進める必要があります。したがって次に開設するステップへ進む必要があります。

フルファネル型マーケティング部へ変革

売上への貢献度が3~7%を超え始めると、活動予算も増えマーケティング組織は事業の中核的なポジションを狙いやすくなります。マーケティング部の重要度は極めて重要になります。マーケティングDXへの土台となります。

ここからは企業活動全体のファネルを俯瞰して設計します。事業部からの依頼や社内発注の限られたスコープではなく全体を俯瞰したマーケティング戦略を実行する組織になります。

フルファネル型マーケティング部のメリット

プロジェクト単位で稼働していたマーケティング組織から、全社的にマーケティング活動を行うことにより獲得したリードを全社的に運用・活用するようになります。その結果、クロスセル施策などのマーケティング活動も行いやすくなるのです。

各位事業部毎のサービスを整理しマーケティングファネル全体を俯瞰したジャーニーマップに整理しマーケティング施策を構築します。

自社の様々な商品・サービスのリードを獲得するためのコンテンツマーケティングや、マーケティングオートメーションなどを横断的に効率よく運用できるようになります。

このフェーズではマーケティング予算を各施策をプロジェクト単位の経費として処理するのではなく全社的な戦略投資として全体像を構築する必要があります。

また、この体制ができあがると、インサイドセールスも有効に機能しやすくなります。例えば、マーケティングからインサイドセールスまでを全社・全サービス横断で対応し、各事業部毎に最適化されたフィールドセールスにSALするなどといった体制を作ることができるようになるのです。

インサイドセールスとは、内勤営業やリモートセールスなどともいわれるセールス活動をおこなうチームです。フィールドセールスが客先に出向いてセールス活動をするのに対し、インサイドセールスは非対面でセールス活動をおこなう役割をにないます。そのためインサイドセールスは、効率よく多くの商談をこなすことができる特徴があります。

既存客に対する逆ファネル

これまでマーケティングを新規顧客を獲得するための領域を中心でしたが、既存客に対しても十分な対応が必要です。

カスタマーサクセス

既に契約いただいている顧客にに対しサービス利活用のサポートをおこなうことで、解約防止、アップセル・クロスセルに繋げます。

特にB2B向けの単価が高いSaaSなどでは必須の組織となります。単価のひくいB2Cであっても、うまくデジタルソリューションを活用することで人件費を抑えて実施できます。

顧客の対応状況を各担当ごとに把握するために、顧客の対応内容の詳細を、顧客別に履歴管理するシステムが必要になります。

アカウントセールス

アカウントセールスは新規契約獲得だけではなく、既存客に対しても手厚くサポートをおこない案件を獲得します。この場合は顧客毎にセールスがつくため、事業部横断したセールスが重要です。

この場合は特に取引高の大きい商材・サービスにマッチする体制となります。特にマス広告を取り扱う大手広告代理店がこの体制を採用しています。

営業活動においてSFAをフル活用し日々のセールス活動を記録します。

マーケティングDXに挑むマーケティング部

ここからが本格的なデジタルとデータを活用したマーケティングDXの話になります。全社的な情報資産をマーケティングに活用します。部門を横断して自社が保有する顧客に関するデータをマーケティングや経営戦略に活かす中核組織を目指します。

新規リード獲得のみならず、既存客へのリテンションなど全体を包括的にマーケティング施策をおこなうためには、自社のあらゆるデータを集めて活用する必要があります。

この段階にくると「マーケティングDXとは?戦略・施策の導き方を事例で解説」の実現できるようになります。

マーケティングDX:タッチポイントごとに施策を洗い出しデータ設計を行う
引用元:マーケティングDXとは?戦略・施策の導き方を事例で解説

このように各部門のシステムで取り扱うデータを線でつないで連携させてもデータを十分に活用できません。全体を統合するデータ基盤が必要不可欠です。

データ基盤の構築・運用

全社の様々なシステムで取り扱うデータを、統合活用できるようにするデータ基盤を構築しデータを集約させる必要があります。

システムの構造については博報堂アイ・スタジオ「マーケティングDXとは?成功に導くデータをフル活用するコツ」にまとめました。ぜひ参考ください。

博報堂アイ・スタジオ DXコンサルティング マーケティングDXとは?取り組むべきデータ基盤の基本を解説
引用元:博報堂アイ・スタジオ DXコンサルティング マーケティングDXとは?成功に導くデータをフル活用するコツ¥¥¥

マーケティングDXにおけるマーケティング部門の在り方

このように、あらゆる部門で顧客に関連する情報を取り扱うため、システム連携が必要となり、マーケティング部門の中だけでは完結できなくなってまいります。

中小企業にとっては、比較的進行しやすいところですが、大企業のような大きな組織となると一筋縄にいきません。段階的にフェーズを分けて進行する必要があります。

DX推進タスクフォースが社内に組織されている場合は、マーケティング部門が積極的に関与し、全社的なデータ統合を働きかけましょう。全社的な顧客データをマーケティングにフル活用するためには、DX推進タスクフォースに参加し、企業変革の中にどのように組み込むべきかイニシアチブをもってけん引することが大切です。

中小企業向けのマーケティングDXについては「マーケティングDXとは?重要性や課題、進め方を実例をもとに解説」にまとめましたので、ぜひ合わせてご参照ください。

マーケティング組織のまとめ

ここで紹介したのは、あくまで一例です。実際には、ミッションやビジネスモデル、取扱商品、人材、設立からの経緯などさまざまな条件で組織がつくられ変化します。

本記事がマーケティングDXの道しるべとなれば幸いです。

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タイトル博報堂アイ・スタジオ「予測困難なAI時代、マーケティングDXでどう迎えるか」
開催日2023/10/17 11:00~12:00
参加方法Zoom
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