GPTやAIに仕事を奪われる?個人単位ではなく企業単位での脅威となるケースを考えます。これは単に一企業のリスクではなく、競合を含める業界全体にインパクトを与えるスケールとなります。
この変化は今に始まった話ではなく、コロナ禍以前から無くなってしまった産業が多くあります。DXの発端となるデジタルディスラプターなどの存在がそれにあたります。
実際に仕事がなくなるというのはそう簡単に起こることではありません。しかしながら、実際になくなった事業は少なくありません。したがって、必要以上に恐れることなく状況を的確に把握し意思決定することが重要です。
ここでいう経営計画のアップデートの目的は、想定外若しくは想定を超えたチャンスやリスクに対し先手を打ち、自社を取り巻くステークホルダーに宣言することです。
外部環境の変化を把握する
自社をとりまく外部環境の変化を観察する必要があります。まずは自社の取引先やサービス利用者にどのような変化が発生しているか確認することが先決です。
売上や顧客数やリピート数などに具体的な数字の変化が確認できる状態なのか?確認する必要があります。
弱肉強食から適者生存へ
同じマーケット内の競合との戦いは弱肉強食の世界です。それに対しマーケットの外からマーケットそのものを駆逐してくるデジタルディスラプターとの戦いは適者生存の世界となります。そのため、弱肉強食の世界と適者生存の世界では戦略も戦術も全く異なります。
例えば、昭和時代長年使われていたカセットテープを見てみましょう。カセットテープはCDの誕生とともに大きくマーケットを失い、デジタル記憶媒体によって市場そのものがなくなってしまいました。
カセットテープの競争は差別化が難しく、ブランディングやマーケティング(製品・価格・流通・プロモーション)の競争でしたが、それではCDには全く通用しません。いくらサプライチェーンを見直し製造コストを抑えるなど尽力しても全く無力なのです。
ただ、AIが自社のサービスを駆逐するのではと、必要以上に恐れると判断を誤ってしまいます。正しく見極めなくてはなりません。
まずはイノベーターを調査する
イノベーター論に基づき、AIを先駆的に活用している顧客から調査しましょう。変化に敏感なイノベーター/アーリーアダプターから顧客行動の変化を調査することが大切です。
調査方法はアンケートやインタビュー、SNSの調査などさまざまな方法がありますが、まずは普段の取引先に聞き取りからはじめてみるのもよいでしょう。
自身がイノベーターになってみる
そして、実際にAIを活用して自社のサービスを駆逐する側に回ってみましょう。AIを使い込んでまず気づくことは、そう簡単に仕事を奪えるものじゃないということではないでしょうか。
ただ、技術革新は常に進行していくため、油断はできません。実際に自ら使い込むことで、先の見通しもより正確につかみやすくなります。
何よりも自身の仕事の何がAIに奪われ、何がAIで対応できないのか正しく理解することができます。そのため、自ら自身の仕事を駆逐する側に回ることは大切です。
また、これは企業ではなく個人の話で余談ですが、AI使ってみてやっぱり自分の仕事はAIにすべて取ってかわってしまう!と確認できた方は、そのままAIを使って仕事を奪う側で居続けた方が良いと思います。
時間軸で変化をみる
次第にアーリーマジョリティ、レイトマジョリティと新市場にシフトしていきますが、最終的に変化が停止し既存市場のシュリンクが一定程度に収まる場合もあります。
広告業界での事例
たとえば広告業界でのデジタル広告の拡大と4マス広告のシュリンクの推移を見てみましょう。4マス広告(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の市場がデジタル広告にシフトしている様子を確認できます。
このように定点観測をおこなうことで、今後の未来の変化も予測を立てることができます。
また、これまでの様々なプラットフォームの変化の実績と比較することも目安になります。シェアをどこまで伸ばすかあたりを付けることができます。
ユーザー数1億人到達までの期間
— 官報ブログ (@kanpo_blog) May 13, 2023
ChatGPT:2ヵ月
TikTok:9ヵ月
Instagram:28ヵ月
Facebook:54ヵ月
Twitter:65ヵ月
提供開始時の市況も異なりますが ChatGPTの破壊力 ハンパない pic.twitter.com/j4kRdPUPqr
外部環境の変化をPEST分析で整理する
AIの浸透により、社会全体がどのように変化するのかPEST分析に整理します。PEST分析により外部環境の変化の推移を整理します。これをヒントに自社の強み弱みを導くことができます。
こちらの記事ではPEST分析で10年後の未来の予測を立てる方法を紹介しています。PEST分析とは、自社の外部環境をマクロで分析する分析手法です。
不確定な要素は不確定と定めアジリティを高める
既存事業の事業責任者の立場としては、アジリティを高めることが急務だといえます。アジリティとは激変する外部環境へ適応する能力を高めることです。
予測困難な不確定な変化に対するアジリティの確保は欠くことはできません。世の中の変化に対しどれだけ柔軟に適応できるか。それは世の中の変化を定性的・定量的に把握し、新規事業・事業転換・撤退・多角化することもあらゆる選択肢を素早くとれる状態を目指します。
たとえば、内製化していた業務をアウトソーシングに切り替える、紙で管理していた情報をデジタルで管理する、担当者各々がパソコンで管理していたことをSaaSで全社で共有利用するようにする。これだけでも大幅にアジリティが向上します。
内部環境の変化を把握する
AIの利活用によって大幅な業務効率などを測れないかをチェックします。アクセンチュアがビジネスで想定されるジェネレーティブAIの活用ユースケースを挙げています。
この例を参考に自社の業務の中でAIに置き換えられそうなものがないか確認してみましょう。業務効率などのヒントを得られるかもしれません。
経営戦略を見直す
さて、ここからが本丸の経営戦略の見直しです。自社への内外からの影響を分析し、どのような変化が考えられ、どのような戦略が必要なのか確認してみましょう。
自社の強み・弱みを3C分析でチェック
自社の強み・弱みの変化を洗い出す際に「顧客」「競合」「自社」それぞれの視点から抽出します。
このようにマトリクスで自社の強み弱みをそれぞれの観点から整理します。例を提示します。
3C分析 | 自社にとって | 顧客にとって | 競合と比べて |
---|---|---|---|
自社の強み | 高品質なアプトプット 大手グループ企業の傘下 | きめ細かなサービス 密なコミュニケーション 大規模開発マネジメント リスクマネジメント | 高品質 大規模な制作実績 安全性 コンプライアンス |
自社の弱み | 人材確保が弱い 人材育成に時間がかかる グループ外のニーズに応えにくい | 人件費が高い 戦略が弱い 専門分野しか受注できない | 業務スコープが狭い 費用対効果が低い ビジネス成果の実績が弱い |
このような感じで、3つの観点から自社の強みと自社の弱みを導きます。
SWOT分析に整理し基本戦略を導く
強み・弱みを導いたら、AIに関する外部要因・内部要因の変化を元に、強み・弱みと機会・脅威の変化を導きます。…①
このSWOTの外部要因、内部要因がAIの影響を受ける部分ということになり、機会と脅威を導きます。
続いて②クロスSWOTで戦略を導きます。
うつべき戦略を導くことができれば、これから新たに取り組むべきことは何か?方針の調整が必要ないか検討します。
- 積極攻勢戦略→AIを事業の中心に取り入れ積極投資し攻め込む戦略を立てます。
- 弱点強化戦略→AIに対し劣性に立つ部分をどのように補うか戦略を立てます。
- 差別化戦略→AIを活用し品質向上、コストカットなど競合との差別化戦略を立てます。
- 防衛撤退戦略→既存事業からの撤退も視野に入れた戦略を立てます。
SWOT分析の具体的な活用についてはこちらを参照ください。
アンゾフのマトリクスで新たな取り組みを導く
「既存の取り組み(既存製品)」と「新たな取り組み(新製品)」をマトリクスにまとめ、新たな取り組みについて検討します。選択肢を洗い出します。
経営計画の補正
ここまで必要な戦略を導き整理したところで、それを実行するために必要なリソースを確認します。
そして、従来の経営戦略と差分を導き、経営計画に修正が必要ないか確認を行います。
AIを浸透・活用することでリスク回避やチャンスの獲得など舵を取る必要がある場合、経営計画全体のアップデートが必要です。
今後、AIは他のデジタルディスラプターと同様にいくつかの既存マーケットそのものを駆逐していくでしょう。
まとめ
普段の営業活動である弱肉強食競争に対し適者生存競争への分析をまとめました。
適者生存競争においては「撤退」も重要な戦略となります。経営者にとって「撤退」とは身を切る計画であろうと思います。しかし、この撤退も選択肢から排除してはならないのです。撤退を選択できるできる環境構築計画(多角化・新商品開発戦略など)と、撤退するための条件を計画に整理しましょう。
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