このページではブランディングの基本的な考え方と戦略を解説します。ブランディング戦略とは、自社や製品サービスなどをどのように認知され、他社とどのように差別化をはかるかを取り決める取り組みといえます。昨今ではブランディングに対して疎かったB2B企業も注目を集めています。
よくある誤解が、ブランドディング=高級品というものではありません。シャネルやブルガリ、エルメスといったハイブランドは、あくまでブランド戦略の一手段であるとご留意ください。そのうえで自社に必要なブランドとは何か?どう導くべきなのかのお話です。
ブランディングを行う目的・メリット
ブランディングの目的は、利益(=付加価値)の創造にあります。利益を上げるためにどのような付加価値を生み出すか。
ブランディングにおいて抑えるべき付加価値があります。顧客が得られる価値・ベネフィットは何かおさえる必要があります。
- 機能的価値 … コストパフォーマンス、高性能、高品質 etc.
- 情緒的価値 … おしゃれ、ステータスが得られる etc.
- 社会的価値 … 地元・地域に貢献できる、環境によい etc.
主に機能的価値と情緒的価値がブランディングを語るうえで取り上げられます。しかし、昨今では3つめの社会的価値も重要であろうと考えています。社会的価値というのは、地球環境であったり、地域への貢献であったり、その商品を利用することで社会へ貢献を実感できる価値が高まっているといえます。このように「機能的価値」「情緒的価値」「社会的価値」の3つのベネフィットの総和がブランド価値となり利益を生み出します。
中でも機能的価値は重要で、どんなに情緒的価値や社会的価値が優れていても、不良品であったりと機能的価値が損なわれていては話になりません。逆に情緒的価値や社会的価値が劣っていても機能的価値が優れていればそれはそれで成り立ちます。従いまして、機能的価値がベースにあっての情緒的価値、社会的価値がブランディングにおいて大切であるといえると考えます。
企業ブランドと製品ブランド
これからブランディングに取り組むさい、これから取り組むブランディングの対象は、企業ブランドなのか?製品ブランドなのか?明確に区別する必要があります。
「トヨタ自動車」には、「クラウン」「アルファード」「カローラ」と企業ブランドから独立して製品ブランドが細かく分かれています。一方、同じ自動車メーカーである「BMW」は、「BMW 3シリーズ」「BMW X6」「BMW iX」と企業ブランドと製品ブランドの明確な区別がありません。
次に家電を見てみましょう。「ソニー」は、「ブラビア(テレビ)」「アルファ(一眼レフ)」「ハンディーカム(ビデオカメラ)」と企業ブランドと製品ブランドは分離しています。一方で「バルミューダ」は、「BALMUDA The Toaster(トースター)」「BALMUDA The Gohan(炊飯器)」「BALMUDA The Pure(空気清浄機)」企業ブランドと製品ブランドの統一が図られています。
このように企業ブランドと製品ブランドと別けたり、統一したり経営戦略に基づいて取り決めるべきで、極めて重要な意思決定が必要です。当然、それぞれにメリット・デメリットがあるので紹介します。
企業ブランドと製品ブランドを統一した場合(BMWの例)
企業ブランドと製品ブランドが統一すると、企業としてのブランドの一貫性を保ちやすく全体最適化を図りやすくなります。まさに先に挙げたBMWやバルミューダのような例です。そのため、企業のブランディング予算を製品全体に効率よく波及させ高い費用対効果を期待できます。
- 企業と製品の全体最適を図りやすい。
- ブランディング施策の費用対効果を高く見込める。
企業ブランドのブランドコンセプトを自社、市場(顧客の集まり)、業界(自社・競合の集まり)の3軸から定めます。自社の存在価値は何か?企業理念から自社のブランドのあるべき姿をまとめたものがブランドコンセプトになります。
企業ブランドと製品ブランドを別々に設定した場合(トヨタの例)
一方、トヨタやソニーの様に企業ブランドと製品ブランドが別々の例です。ブランド・イメージの全体統一を図ることが難しく企業のブランド・イメージがブレやすく、ブランディング予算も別々に必要になります。しかし、メリットも多く、製品ごとのターゲットに合わせた部分最適を図ることができ、M&Aでプロダクトの売却もスムーズに行うこともできます。また、企業が不祥事を起こしてしまった際も製品ブランドのダメージは最小に抑えることができます。
- 製品のターゲット別に部分最適化を図りやすい。
- 製品ブランドをM&Aで売却しやすい。
- 不祥事などのダメージを受けにくい。
この場合の企業ブランディングの場合は、企業、市場、業界の3軸からブランドコンセプトを抽出します。一方で企業ブランドから独立した製品ブランドのブランドコンセプトは、自社製品と顧客、競合商品の3軸から定めます。このことからもスコープが異なり、よりきめ細かな部分最適できる事がお判りいただけると思います。
ブランド・コンセプトを定義する
さて、ブランドコンセプトという言葉が何度か出てきました。企業ブランドなのか独立した製品ブランドなのかによって、スコープが異なることを紹介しました。
自社のブランド・アイデンティティを定義する
顧客・ターゲットからどのように見られたいか、打ち出すべきブランド・コンセプトをより詳細に分解・定義したものを、ブランド・アイデンティティといいます。ブランド・アイデンティティは、ブランド・アイデンティティ・プリズムというフレームワークで整理することができます。
ブランドの物理的特徴− それは、具体的かつ物理的な付加価値であり、ブランドのバックボーンでもあります。それはブランドの物理的側面を考慮します:それはどのように見えるか、それは何をするか、その品質を表すブランドの主力製品です。たとえば、コーラの暗い色と無色のスプライト。
ブランドのパーソナリティ − ブランドが人だとしたら、どんな人になりますか?誠実(TATAソルト)、エキサイティング(パーク)、頑丈(ウッドランド)、洗練された(メルセデス)、エリート(ヴェルサーチ)でしょうか?ブランドは、その製品やサービスを物語る個性を持っています。
有名なキャラクター、スポークスパーソン、または表彰台をブランディングに使用すると、ブランドに即座の個性が与えられます。
ブランドの文化 − ブランドを支配し、刺激するのは一連の価値観です。出身国、地理的に多様な地域でのブランドの存在、社会の変化などは、ブランドの文化を構築する上で重要な役割を果たします。
ブランドのセルフ・イメージ −それは、ブランドが顧客の心の中で作り出すことができるものであり、ブランドの製品を購入した後、顧客が自分自身についてどのように認識するかです。
顧客とブランドの関係性 −ブランドを使用した後の、ブランドに対する顧客の認識です。たとえば、「私が購入したサンダーバードは価格に見合う価値があります。レジャーライディングの楽しさを与えてくれます。RoyaleEnfieldに感謝します。」
ブランドのターゲット −ブランドは消費者とコミュニケーション、相互作用、取引を行います。ブランドを定義するのは行動様式です。この要素は、サービスブランドにとって不可欠です。たとえば、心のこもった関係が顧客のお金を尊重して扱うことに関して顧客への信頼を育む銀行。
顧客・ターゲットが自社のことを勝手に描いているイメージを、ブランド・イメージといいます。
このブランド・イメージとブランド・アイデンティティのギャップを埋めることが、ブランディング施策になります。
顧客からのブランド・イメージを把握する
ブランド・イメージは、アンケートやデプスインタビューなど調査を通して把握します。主にブランド認知調査と、ブランド・イメージ調査の2種類があります。
ブランド認知調査は、認知の有無や認知経路、想起レベル(純粋想起や助勢想起)を問います。
そしてブランド・イメージ調査は、定量調査と定性調査に分類されます。
定量調査では、消費者が企業ブランドや製品ブランドに対してどのようなイメージを持っているか、その傾向を調査します。ブランドに関するイメージワードを複数設定し、「○○(ブランド名)についてこの言葉はどのくらい当てはまりますか?」といった質問をし、「そう思う」、「どちらともいえない」、「そう思わない」などの選択肢を回答してもらうやり方が一般的です。
定性調査では、なぜそのようなブランド・イメージを持っているのかといったような理由を深堀することができます。グループインタビューやデプスインタビューを通して、ブランド・イメージがどのように構築されたのか、他のブランドとはどこで差別しているのかなどを調査することは、ブランド戦略構築にも役立つでしょう。 また、定量調査をする際のイメージワードを洗い出す際にも有効です。
ポジショニングマップでギャップを可視化
ブランド・イメージとブランド・アイデンティティのギャップを埋めるために、顧客のブランド・イメージを把握します。ポジショニングマップを作ります。
ブランド・イメージを確認したらペルソナを作成
そこでペルソナを作成します。ペルソナから自社はどのように見られているのか?どのように見られたいのか?じっくりと検証しましょう。
ペルソナの作り方はこちらを参照してください。ペルソナはブランディングにおいても重要です。
ペルソナのタッチポイントを洗い出しブランド体験を設計
カスタマージャーニーマップを作成し、顧客のタッチポイントを抽出し、すべてのタッチポイントにおいて、どのようなブランド体験を提供できるか設計していく必要があります。
ここで重要なのはユーザ体験の一貫性を持たせることです。
商品を知って購入し、利用するまでの全体の流れが、店舗や施策別にバラバラで失ってしまっては意図したブランドは構築できません。
商品・サービス
まずは、最も重要な商品のベネフィットやサービスを体験いただく際の体験設計です。
まず製品であれば、手にした箱から始まります。これから商品を箱から取り出す最も期待が高まる瞬間の体験設計ができているか?ということです。昨今では話題の商品はYoutubeで「開封の儀」と検索すると様々な事例を確認することができます。このようにYoutuberの間でも「開封の儀」は1ジャンルとして確立しているため、ブランディングにおいて無視できません。
多くの日本企業は製品やサービスに関しては、価格以上に全力で力を注ぐ傾向が強くその結果が、企業を横断したMADE IN JAPANブランドであるため、ここは私が語る以上に皆様の方がプロフェッショナルなのだろうと思います。
広報
どのメディアにどのように紹介してもらいたいか。広報はコントロールすることができません。
マーケティング
ブランディングの目的は売上を上げることがミッションである以上、主戦場でもあるので
ファネルごとに施策をブランディングの設計を行います。
マスメディア、ネット広告、SNS、Youtube、SEO多岐に及びます。また、ステップメールやニュースレターなど既存客や囲い込んだ見込客に対するコミュニケーションも同様に一貫したブランディング設計が必要です。
そして、Appleに至っては小売店の売場を間借りして、専門の店員を派遣するなどまで行います。
第一想起
顧客が課題が顕在化した際など、ある特定のカテゴリを思い起こしたときに、自社のブランドが思い浮かぶか?ブランディングにおいて第一想起にあれるかどうかは、極めて重要です。消費者の無意識の記憶の中に刻む必要があります。
第一想起に自社が含まれることを目標に施策を考えます。
比較検討
消費者が他社製品と比較検討する際に自社製品をその中に入れてもらえるかどうか。多くの場合比較検討は2~3商品で行います。4つ以上になると比較が非常に複雑になるため、想起する3商品の中に食い込むよう印象付けることが重要となります。
これら認知は主にマーケティング活動となりますが、当然ここにもどのように認知されるのかブランド設計が必要になってまいります。
決済・配送・確認メール
購入に至る際の決済などです。昨今では決済手段が多様化しています。ブランド・アイデンティティに先進性などを含む場合、最新の決済手段はできるだけ取り込むべきでしょう。
リピート施策・エバンジェリスト
自社のロイヤルユーザの中でもとりわけ、自社製品の良さを第三者に広めてくれるユーザをエヴァンジェリストと呼びます。例えばAppleには、Apple信者と呼ばれるほどのエバンジェリストが数多くいます。ディズニーもしかりです。
セールス(営業・接客・販売)
セールス・販売員は、人が顧客と対面する非常に重要なポジションです。まさに、そのブランドの人となるわけです。
インサイドセールス・フィールドセールス・契約・決済
顧客と電話やメール・チャットなどで対応するセールスをインサイドセールスといいます。これらの直接対面しないタッチポイントにおいてもブランドの一貫性を保てているか設計の対象となります。
店舗・接客・会計
お客様がお店に入店する直前の店構えから店内の雰囲気、ブランド・アイデンティティの一貫性が保てているか。
また、宝石店やハイブランドの店員は商品を扱いさい必ず手袋を付けて商品を扱います。顧客に対しその商品が貴重で高価な品であることを言葉ではなく振る舞いで伝えているのです。
カスタマーサービス、カスタマーサクセス
商品購入後のアフターサービスもブランディングに大きく寄与します。
ここでも、ブランディングの一貫性が求められます。
その他
従業員のイメージ、採用面接、求人票、
インターナルブランディング
以上の様に顧客へのブランディングを浸透させるためには、マーケティング活動のみならず、セールス、販売、カスタマーサービスなど従業員すべてに対して浸透させる必要性に気づかされます。
こうしたブランド提供価値を社内に浸透させていくための一連の活動をインターナルブランディングといいます。それに対して社外に対するブランディングをアウターブランディングといいます。
これは企業の存在意義からどのような顧客にファンになってもらいたいのか。経営理念からブランド・アイデンティティを定め、経営戦略の中にブランド戦略を立て施策を実行する。これをPDCAで回すことで、社内のブランディングを浸透させていきます。
一貫性を保つための7つのエッセンス
また、この一貫性を保つためには時間軸でも維持する必要があります。
社内でも新商品を沢山リリースしたり、部署を再編成したり、経営層が変わったり、オーナーが変わったりしてもブランド・イメージを一貫性を保つために大切な事が7つあります。
- ブランドの目的 … 経営理念、経営戦略です。
- ブランドのターゲット市場 … マーケティングセグメントです。
- ターゲットのJOB … 解決する顧客の悩み事です。
- ベネフィット … 機能的価値、情緒的価値、社会的価値です。
- 競合との差別化ポイント
- ブランドキャラクター … 擬人化したキャラクターです
- ブランドアイコン … ブランドのロゴですね。
変化への対応
昨今、外部環境の変化の激しい時代です。常に変化を的確にとらえて適応、していくことが変化の激しい時代においては重要です。
特にスタートアップや新規事業などにおいては自社の変化が激しくなります。ピボットなど、過去のブランディングが足かせになるようなことがあってはなりません。
このように常に、顧客や競合自社の変化をとらえてブランディングも適応させる必要があります。
まとめ
ブランディングの基本的な考え方についてまとめました。
自社をどのように見られたいかブランドコンセプトに整理します。そして、さらに詳細に分解しブランドアイデンティティにまとめます。自社の理想的なブランドアイデンティティと、実際顧客にどう思われているかブランドイメージのギャップをなくしていくことがブランド戦略です。
ぜひ自社のブランディングう戦略・施策にお役立てください。
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