マーケティングの4Pの重要な要素Price(価格)について整理します。まずは自社の商品・サービスの小売希望価格(定価)はどのように決めるべきなのか?小売希望価格(定価)を決めるまでの基本的な流れを整理いたしました。
自社商品の適正価格を導いた後に定価を決める
定価を決める前に、自社商品・サービスの適正価格を求める必要があります。適正価格とは、きちんと儲かる(利益が残る)価格でありつつ、自社の商品が顧客から選ばれる価格です。そのために、自社・顧客・競合の3つの視点から適正価格を導きます。
ここでは販売価格ではなく、自社商品の適正価格がいくらくらいなのかを意識して導きましょう。
自社視点で適正価格を導く(コストプラス価格設定)
まずは、自社にとってきちんと利益が出せる価格設定の方法です。
コストに対して必要な利益を乗せて算出します。この方法だと、自社の利益を確保できるものの、一方的な価格であるため顧客に選ばれるかどうかは未知数ということになります。
実際の販売価格は適正価格からセールなどの値引きした後の金額となるため、利益はさらに圧縮されることがあります。販促などを想定して設定する必要があります。
多くの場合この方法の問題は、あくまで自社都合の価格になってしまうことです。顧客がその価格を高いと思うか安いと思うかは、まったく別問題となってしまいます。
顧客視点(市場)での適正価格(需要価格設定)
そして、次に顧客が適正と感じる価格の算出方法です。顧客は相手によって高いと感じる価格、安いと感じる価格が異なるため統計的に算出することになります。
顧客にアンケートを行い顧客視点での適正価格を求めることができます。この場合顧客に理想的な価格を問いただして求めることは難しく、PSM調査(「高すぎて買えない」「高く感じる」「安く感じる」「安すぎて不安」の4つの価格を集計すること)で適正価格を導くことができます。
横軸に価格。縦軸に回答者の割合を集計します。回答者の数が少ないときれいなグラフが描けないので、ソコソコ回答者の数と幅が必要です。
当然この適正価格の算出方法は、顧客視点であるため自社に利益が残るかどうかは別の問題となります。
競合比較から適正価格を導く(業界ポジショニング)
ポジション二ングマップで自社商品と競合商品と比較します。一つの軸を価格、一方を価格と関連性の薄い軸を立てます。自社商品の価格をどのポジションに配置するかを決めましょう。
顧客はこれら競合を含めて自社の商品を選定しています。自社の製品はどこに位置するかを見定め適正価格を導きます。
品質×価格、ブランド×価格、認知度×価格、希少性×価格
適正価格から戦略的に希望小売価格(定価)を設定する
適正価格を求めたら希望小売価格(定価)を決めます。利益が見込めて、顧客からの視点、競合とのポジショニングの3方から見た適正価格を導いたのちに、戦略的に希望小売価格(定価)を取り決めます。
ペネトレーション・プライシング
適正価格より安く設定しシェアを取る戦略。
昔ソフトバンクがADSLの日本シェア1位を獲得するために取った戦略です。当時のインターネットの常時接続としては断トツの低価格でした。
ペネトレーション・プライシングは資金繰りに注意が必要。売っても利益が少ない価格戦略であるため、資金調達力とセットで考えることが重要である。
スキミング・プライシング
プロダクト。ライフサイクルの初期段階で価格を高めに設定し、早期資金回収を狙う。特に特許商品など競合が参入できない条件下では、独占販売できるためとても有効な戦略です。
- 特許等で強力な参入障壁をつくれるサービス
- 航空会社、携帯電話など許認可制で参入障壁をつくれるサービス
たとえば、有機ELテレビなど超高画質のテレビなどは非常に高価でした。
スキミング・プライシングは、ブランド力や差別化、競合の参入障壁の高さが重要となる。そのため商品の原価以外の戦略・施策コストを考えることが重要である。
プライス・カスタマイゼーション
商品を販売する場所やタイミングに応じて細かくカスタマイズする戦略。
日本酒などはエリアによって販売価格が大きく異なります。インターネットの浸透で行いにくくなりましたが、ネットでの注文を特別価格に設定するのも同様の戦略になります。(この場合は定価ではなく販売価格となりますが)
安く見える価格設定
最後に希望小売価格まで導いたところで仕上げです。皆さんおなじみだと思いますが、端数を削るテクニックです。10,000円で販売したい商品であれば9,800円と定価を設定します。800円のものは790円と設定することで直感的にお得感を演出します。
まとめ
以上、適正価格から戦略的に定価(小売希望価格)価格を決めて販売価格を求める手順について説明しました。
自社にとっての適正価格、顧客にとっての適正価格、競合と比較した適正価格を求めます。そして、それら適正価格を踏まえたうえで戦略的に自社の商品の定価(希望小売価格)を決めます。
最終的に、相手やその状況などに応じて販売価格で販売することになります。
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