売上目標を達成する方法と、個人目標KPIの立て方

戦略
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営業活動において企業に向けた売上目標を達成するための考え方と、個人目標KPIの立て方の話です。特に達成困難と思われる売上目標をどの様に分解し計画に落とし込むかプロセスを解説します。

定めた売上目標をどのようにして達成するか?複雑な事も細かく分解していくことで、達成に必要な個人目標(個人KPI)とタスクも明瞭になってきます。

売上目標の達成するための手順

まず、売り上げを構成する要素を因数分解します。因数分解し因数ごとに施策を分解して達成可能な指標を設定していきます。

売上目標を因数分解する

売上を重要な指標に分解します。売上を構成るする要素で最も重要な構成要素は客数と客単価になります。

売上=客数×客単価

ほぼすべての業界で共通した分解方法です。

「来期売上目標」を達成するためには、「来期客数」を上げるか「来期客単価」を上げる若しくは両方を上げるということになります。

因数ごとに施策を考える

例えば、法人営業が定価100万円の法人向け設備機器の販売をすると仮定します。年間販売顧客数が500人だった場合、売上は5億円となります。

では、この営業マンが翌年の売り上げを増やそうとした場合、どうする必要があるでしょうか?

  • 客数を増やす
  • 設備(商品)の単価を上げる
  • 客数と単価の両方を上げる

という3つの方法が考えられます。

この3つの中で営業マンが着手しやすいのは、「顧客数を増やす」ということになります。「設備機器の単価」を上げるのは、競合との兼ね合いや商品開発など様々なハードルがあるため、なかなか難しくなります。

ケーススタディ

このような前提条件があったとします。設備機器の販売に加えて10万円のPCを販売し売上の増加を狙うとします。

  • マネージャー:1人
  • 営業人数:10人
  • 既存担当顧客数/営業1人:50社
  • 今期売上:5億円
  • 来期売上目標:5.24億円
  • 見込客リスト:500社
  • 商品単価:10万円

まずは初めにやるべきは、来期の売上目標のギャップを求めます。来期は、今期に比べて2400万円多く売上る必要があります。

次に商品をいくつ売る必要があるか求めます。商品の単価が10万円であることから、来期は240台売る必要があります。

そして、営業一人当たり何台平均して売る必要があるか求めます。営業が10人いるため、年間営業一人当たり来期は24台/年販売する必要があります。

したがって、毎月今期よりも+2台/月づつ販売することで、売上目標を達成できると試算できます。

では毎月2台づつ販売するためには何をすればよいのでしょうか。

顧客と商品の組み合わせを分析する

ここでアンゾフの成長マトリクスというフレームワークを使ってみます。横軸に製品(既存製品と新商品)、縦軸に顧客(既存客と新規顧客)を配置したマトリクスです。

アンゾフの成長マトリクス

今回の例では、既存製品を240台/年売る必要があるため、「市場浸透戦略」と「新市場開拓戦略」を考えることになります。

一般的に新規顧客の開拓は既存顧客に比べてコストがかかります。新規顧客獲得コストは、既存顧客の5倍かかることが多いといわれており、マーケティング界隈では「1:5の法則」といいいます。既存客は既に取引実績があり、これまでの関係性から優先的な提案の機会を得やすいためです。

ここでは「1:5の法則」を参考に既存顧客と新規顧客に同様の稼働をかけて獲得する前提で試算します。新規顧客は5倍の商談回数が必要ということになります。皆さんは、今期や前期の成約率を元に試算するとよいと思います。

以上の内容から以下のように獲得予想することができます。

1:5の法則に基づいて既存顧客と新規顧客の成約率を試算

ここまで整理すると営業がやるべきことがイメージできたと思います。毎月2台販売するために既存客に毎月3~6件の商談を行う。もしくは、新規顧客は毎月15~30件の商談を行うことで毎月2件の成約を増やす見込を立てることができます。

したがいまして、既存顧客に対して集中的に営業した方が効率よく目標達成できそうです。

顧客との目標商談数

ただ、ここで終了してはいけません。営業活動は顧客のリストがあって初めて実行できます。目標を達成するには既存顧客リストや見込客リストの質と量が必要になります。

顧客リストから計画の実現性を確認します。

既存顧客数との商談数

既存顧客から毎月2件追加成約を得るために6社/月の商談を行う必要があり、年間72社の商談を増やす必要があります。しかし、営業の担当既存顧客は1人当たり50社であるため、現在の既存顧客だけでは足りません。

年間1社1回の商談数と想定すると、22社の既存顧客の商談が足りない試算になります。したがって、既存客だけでは営業一人当たり7.4台程度販売見込が不足します。

顧客種別目標販売台数既存客成約率見込成約件数目標とのギャップ
既存客24台50社/営業30%16.6社/年-7.4社/年

新規顧客との商談数

既存顧客で不足する7.4台を、新規顧客で穴埋める必要があります。そのために見込客リストを整理してみましょう。

顧客種別アタックリスト成約率見込獲得件数目標とのギャップ
既存顧客50社30%16.6社-7.4台
新規顧客何件必要?6%7.4台※ここを0にする

営業一人当たり年間7.4社を成約率6%で獲得するには、7.4社÷成約率6%で123社の見込客リストが営業一人当たり必要ということになります。

現在の見込客リストは500社なので均等に配分すると営業一人当たり50社であるため、一人当たり73社不足しています。

これでは目標未達の可能性が高く、全く話になりません。

客単価を上げる計画

課題解決策は多くありますが、今回は客単価を上げる方向を考えます。

ここで売上目標の式に立ち返ってみましょう。売上目標は、「客数」×「客単価」でした。そこで、「客単価」を上げることで売上目標を達成する方法を考えてみます。

商品の定価は決まっています。値引きすることはあっても定価以上の価格で販売することはできません。どうすれば客単価を上げることができるでしょうか。

そこで、顧客一社あたりに複数のPCを販売することで、1社あたりの客単価を増やす計画を立てます。仮に顧客の社員数の1%販売できる見込みで計画を立ててみましょう。

まずは営業個人単位ではなく、全体で計画を立て直します。

顧客リストの優先順位付け

客単価を上げる施策は、「市場浸透戦略」の鉄板、既存製品×既存顧客の既存顧客からです。すべての顧客に均等に営業するのは非常に効率が悪いため、2台以上購入いただけそうな見込客の優先順位を付けます。

今回の例では販売したいのはPCなので、PCを利用する社員数が多い顧客の方がまとめて買っていただける可能性が高いと仮説を立て計画をたてます。

既存顧客を分析

既存顧客(500社)を精査すると以下の様に整理できたとします。社員数をもとに顧客当たりの販売見込台数を求めることで、一社当たりの売上台数を引上げ客単価を引き上げることができます。

既存顧客数
500社
社員数見込最大販売見込台数成約率販売見込
10社1000人10台購入見込あり100台30%30台
50社500人5台購入見込あり250台30%75台
300社100人1台購入見込あり300台30%90台
140社50人1台購入するかしないか70台30%21台
既存顧客の内訳

当初の1社1台販売の計画では150販売の見込でしたが、複数台売る計画に変更することで、既存顧客から216台販売できる見込を立てることができました。

しかし、全体目標の240台には24台足りません。不足分を新規顧客で補完できないか調べてみましょう。

見込客リスト(新規顧客)を分析

同じく見込客リストも精査して以下の表のように整理できたとします。既存顧客で不足する24台を新規顧客に販売する計画を立てます。見込客リストを同じく調べてみた結果以下のような社員数だったと仮定します。

既存顧客の成約率に対して新規顧客の成約率は1/5(6%)まで下がっています。そのうえで見込客リストの数から販売見込数を試算します。

見込客数
500社
社員数見込最大販売見込台数成約率販売見込
10社1000人10台購入見込あり100台6%6台
50社500人5台購入見込あり250台6%15台
300社100人1台購入見込あり300台6%18台
140社50人1台購入するかしないか70台6%4.2台
合計43.2台
見込客(新規顧客)の内訳

新規顧客に対しては合計43.2台販売できる見込みがたちました。これは十分な見込客が確保できているということを意味します。

また、特に新規顧客に対しては成約率が低いため、優先順位の高い見込客を重点的に抑える必要があります。優先順位の高い上位12%に当たる60社を確実におさえることで補完すべき台数24台のうち21台を達成を見込めそうです。

まとめると、24台の販売を新規顧客で補完するためには、上位60社(21台販売見込)に加えて、社員数100人規模の見込客50社(3台販売見込)、合計見込客110社へのアプローチで達成できる見込みとなります。

営業個人KPIを求める

営業個人KPIを求めるために、まず全体KPIを整理しましょう。

  • 全体売上目標:2400万円アップ
  • 全体PC目標販売台数:240台(既存:216台、新規:24台)
  • 既存客目標販売台数:216台
  • 新規顧客目標販売台数:24台
  • 既存顧客商談回数:500社
  • 新規顧客商談回数:110社
  • 顧客の社員数の1%以上の台数の販売を目標とする。
  • PC販売価格10万円

次に営業一人一人のKPIにブレイクダウンしましょう。

  • 個人売上目標:240万/年アップ
  • 個人PC販売目標:24台/年(既存:21.6社、新規:2.4社)
  • 既存客商談回数:50社/年(4.16社/月)
  • 新規顧客商談回数:11社/年(0.91社/月)
  • 顧客の社員数の1%以上の台数の販売を目標とする。

というように整理することができました。これらを営業メンバー全員が達成できると目標は達成できるということになります。

ここまで整理して実際にいかがでしょうか。営業一人のタスクがあまりにもハードルが高すぎないか?しっかりと確認しましょう。

個人目標の個別最適化

ここまで営業個人までブレイクダウンしました。ここまでマネージャーが計画を立てる必要があります。

ここまでの数字はあくまで一人一人の平均値ということになります。営業個別に個人目標に落とし込むことになります。

実際営業個人は、入社して間もない社員もいればこの道何十年のベテランもいます。また、給与にも大きく格差があります。長期的な関係維持よりも新規の関係構築が得意など、様々な個性や個人差がある中で、具体的に個別に目標を落とし込んでいくことになります。

組織によっては、営業同士の競争を促すために全て同一ルールとした方がよい場合もあるでしょうし、規模の大きな商材を扱う場合はチーム単位で動いた方がよい場合もあるでしょう。

あくまで先に述べた個人指標は平均値の目安という事になります。

KPIツリーで管理する

ここまでの個人目標KPIをKPIツリーに整理した例がこちらです

このツリーの一番左を営業個人の売上目標から入力して左へ分解して目標値を入力して実績と目標を管理していってもよいですし、マネージャーは部門や全社で作成し月次で管理してもよいと思います。

まとめ

目標売上から営業個人の行動計画まで落とし込む内容を整理しました。

実際は1回の商談で成約に至れないケースも多いと思います。営業活動をフィールドセールスとインサイドセールスに分離すると成約率は非常に高くなります。インサイドセールスとフィールドセールスに営業部隊が分かれていなかったとしても、オンラインで十分な営業活動を行うことで商談の成約率は非常に高くなります。

商材によっては季節や時期によって売れ行きの差があったり、様々あるとおもいます。ぜひ、ご自身の商材の場合はどのように行うか試してみてください。

達成すべき売上目標の立て方をこちらにまとめていますので是非参考にしてください。

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